« OOo2.0日本語正式版、ついに公開 | トップページ | マックス第17話 »

2005.10.28

『紙葉の家』紹介

 そーいうわけで、ろーだん第290巻『サイコ・ヴァンパイア』(2003年5月刊)のあとがきで、私が『紙葉の家』を紹介したときの文章を、一部加筆修正して、抜粋しておきたい。

 興味をもたれたら、amazon などでご注文を。

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-

 今年になって、わたしのまわりである本がささやかなブームになっている。『紙葉の家』(略)という小説だ。(略)

 ストーリーは……ここからして説明しきれないほど複雑怪奇。

1.まず、実在したフォト・ジャーナリスト(実際は南アフリカ人だが、
アメリカ人に設定しなおしている)がホームビデオで撮影した、幽霊屋敷との"戦い"を描いた「ネイヴィッドソン記録」という一連の映像があり、

2.盲目の老人がそれに衒学的注釈をつけていった膨大なメモが、異様な状況で発見され、

3.発見者の青年が、さらにおびただしい脚注を追加し、ついでに自分の日記まで織りこんだ"作品"のタイトルが「紙葉の家」で、

4.出版社がまたまた編注やら、資料やらをくわえて発行したという、四重の重層構造になっていて、1、2、3それぞれで物語が展開されるのだ。

 もとになる"記録"が幽霊屋敷譚だし、 老人のメモが発見された状
況や、青年をとりまく環境も猟奇的になっていくから、ジャンルとして
はホラーになるようだが、全編に著者の"遊び"があふれかえってい
て、にやにや笑いながら読みすすめるうち(とくに『ブレアウィッチ・プ
ロジェクト』を彷彿させる部分などは絶品!)、 じつはその根底にア
メリカの"家庭"……家族・親子・肉親の絆や家庭崩壊といった、シリ
アスなテーマがあることに気づかされ、そこで真の恐怖……というよ
り、もっと漠然とした"不安"につきあたり、 最後は(読者によって印
象が違うかもしれないが)そうした不安を内在するがゆえのカタルシ
スも得られるという、とてつもなくトリッキーな作品なのである。

 その印象をさらに深めるアイテムとして、アルフレッド・ベスターの『虎よ、虎よ!』をもっとぐちゃぐちゃにしたようなページ構成、英語だけでなく、独仏スペイン語からヘブライ語、ギリシア語、ヒンディー語、はては点字までがちりばめられた本文(余談だが、ヒンディー語については、わたしの妻が翻訳に協力したそうだ)、"付属"する写真やコミックなど、ギミックもたっぷり。

 もちろん、ぜんぶフィクションなのだが、実在する人物のコメントもふんだんに出てくるので、ついだまされてしまうことがたびたびあり、これがまたおもしろかったりする。

 こういう本だから、SF仲間がほうっておくはずがない。さっそく、一月中旬に評論家の小谷真理さんが朝日新聞夕刊の書評でとりあげたのをかわきりに、その数日後には永瀬唯が、「読破したぞ。すごい傑作だぞ!」と、興奮して電話をかけてきて、 あやうく最後の展開をばらされそうになり、やがて「○○さんはまだ読み終わっていないら
しい」とか「○○さんは不要な脚注もぜんぶ読んだらしい」というような噂が飛びかいはじめ……と、一篇の小説でこれくらい盛りあがったのは、近ごろではめずらしいほどだった。

 わたしはといえば、正月に読みはじめてすぐハマってしまい、読了するのがもったいないので、じっくりゆっくり、1カ月かけて楽しんだ。

 これだけのめりこみ、耽溺できる作品に出会ったのは……クライヴ・バーカーの『血の本』シリーズ以来だから、15年ぶりくらいだろうか。とにかく、文句なしの大傑作だ。

 といっても、バーカーやクーンツといったタイプのホラーとはまったく違う。著者はホラー小説・映像の作法もギミックのひとつととらえ、それで"遊んで"いるのである。(略)

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-

 という感じ。

 ものすごいモンスターだし、どう読んでもいいんだけど、私はあえて「にやにやしながら読む」 本だと思っている。 このへん、訳者も同意した。 そーいう意味で、ホラーではない。

 でも、やっぱり言葉ではあらわせないんだよね。 この本のものすごさは。 ときどき目ざめて、ほかの本を襲うし(違)。

 というわけで、「趣味:読書」という人は、一度は手にとってみてもらいたいっす。 図書館に注文してもいいから。

|

« OOo2.0日本語正式版、ついに公開 | トップページ | マックス第17話 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/40142/6703735

この記事へのトラックバック一覧です: 『紙葉の家』紹介:

« OOo2.0日本語正式版、ついに公開 | トップページ | マックス第17話 »