セイザーX、いちの水産
うひゃー、今回のレビューはむずかしい。 これね、ただの隊長の粋なはからいってだけの話じゃないよ。
たしかに、この微妙すぎる内容をまとめるのに、 「決戦の前に平和のすばらしさを」ってもっていくのは、それはそれでうまいと思うんだけどね。でも、根底にあるのは、なぜ温泉宿なのかでしょう? で、理由は最後にわかるんだけど、これがなんというか……
セイザーっていうのは、基本的に、不条理な世界なわけです。 この世界の中心は春子さんだし、舞台の中心は安藤家の茶の間だし。そもそも、春子さんが未来人や異形の宇宙人を、ふつうの人間としてあつかっているところから、この不条理世界がはじまってるわけ。
この30話はそうした不条理を、さらにデフォルメして描いちゃった……そういう気がするのですよ。 ま、また例によって、うがった見方だとは思うけど。
それで、いったん安藤家と春子さんからはなれて、もっとディープな不条理世界をつくってしまったんじゃないか。 つまり、 この温泉宿は茶の間の大規模なもの。 女将さんは春子さんより不条理な、この世界のコア。 そういう位置づけ。
こういうメタファーだと考えないと、私には今回のストーリーが理解できない。 逆に、そういう前提で見直すと、「なんだか、このクリエイターたち、とんでもないモノをつくっちゃってるぞ」と、あらためて背筋が寒くなった。
だって、今回のなかで、いちばんリアリティがあるのは、ブレちゃんに会いにきたアクアル姐さんのシーンだったりするわけ。 あとは、いつもリアルなはずのシャークだって、あのカメグフ(ほんとの名前、見るの忘れた)との一連の戦いは、不条理系そのものだったし。
そうなんだよね。この不条理界のなかでは、むしろ3将軍のほうがリアルなのですよ。 このつくり方も、めちゃめちゃすごい。
見ててもうひとつ思いだしたのが、『ケータイ刑事 銭形愛』の1本。 ワンシーン、ワンカットで1話つくったって回があっでしょう? あれ。
映像演出面でも、すこし似てた(銭形愛のほうは、ブレアウィッチの影響か?)からかもしれないけど、なぜかあれを連想した。 でも、いま考えると、あれもかなり不条理な話だったね。 当時は宮崎あおいさんに目がくらんでて、わかんなかったよ。ヽ( ´-`)ノ
そうそう、今回は若女将のれみーに、目がくらんでますた。 いやまあだからそーいう話じゃなくて。
ともあれ、30話はそういう、セイザーの不条理な世界観そのものを前面に押しだした、いままでになくシュールなエピソードだったと、そう思ったしだいです。
このへん、こいつを書き終わったら、MEICHIKUさんの見解も読みにいってみたいな。
それで、タイトルの「いちの水産」について。
私はこういう内輪うけが大っきらいだし、最初に「市野建設」や「いちの水産」を見たところでは、正直むっとしたんだよね。でも、このくらい不条理な世界を描いちゃうと、かえってこっちのほうがリアルなんだと思えてきたから不思議。 いちのマジックですよ。
内輪うけを見て感心したのは、生まれてはじめてじゃないかな。 この作品、10年に1本の傑作をこえて、「神」になりつつあるかも。
ということで、今回、細かいところはほかの方のレビューを見てください。 なんつーか、きょうは神を見ちゃった気分なもんで。
ひとつだけ、特記しとくと……アクアル姐がやってきたところで、ブレちゃんがひと言、「まさか……りかついだ金太郎」。
これ、笑い死にそうになりますた。
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